創業明治元年以来ずっと、取手で親しまれてきていますが、取手に対してどのような思いをお持ちですか?
取手の歴史と私たちの歴史は一緒なんですよ。江戸時代、このあたりは宿場町として、また舟運の拠点として、賑わいがあり栄えていました。もともとはこの辺は湿地帯でしたが、川からの堆積物で地形ができ、人が住むようになりました。
私どもの先祖も、はじめ大鹿(白山前・経弘寺周辺)に住んでいましたが、江戸の街道整備で大鹿よりこの地に移り住むことになったのです。それ以来、取手に住み、江戸時代には廻船業や造り酒屋として営み、明治になってからは今の奈良漬店を続けさせてもらっています。
取手の歴史とともに私たちの歩みがあるのです。取手に支えられていると感じていますので、取手の町には感謝しています。
老舗は、「前の仕事に似せる」「仕似せ」という意味なんですね。この意味通り、私たちには、前の仕事、伝統を受け継いでいくという使命感はありますが、他にもいろいろやっていかなければいけないと思っています。
最近、取手駅東口前で酒販店「シンロク」の片隅にワインバーを始め、ワインに合った奈良漬のオードブルを提供するなど、新感覚のものを行っています。
絶えず前進していかなければ企業は存続できません。大きな飛躍は望まないのですが、少しずつ前に進んでいきたいですね。少しずつでいいんですよ。これが老舗の在り方かな。前の仕事を受け継いで、次に伝えていくことが老舗の役割ですが、これでいいということはないですよ。絶えず工夫して、チャレンジしていかないと。伝統を受け継いで、今の時代にも合わせて、成長していかないとね。
これから起業する方々、独立する方々にエールをお願いします。
なんでも興味を持ったほうがいいですよ。そこからいろんなものが生まれてきますから。内にこもっていてはダメ。表に出て行かないと。
世界を見て回ったり、野山を散策したり、スポーツをしたり、美味しいものを食べたりお酒を飲んだり。外に出て、いろんな体験をする中から、アイデアが生まれてくるのです。視野を広く持つことが大切ですね。